「送って行こう。葵王はどうする? わからんだろう? 後で送ってやるから、一緒に来るか?」

「・・・・・・そうですね。この時刻になってからは、迷いたくないですね」

葵も、夕星と並んで歩き出す。
結局ぞろぞろと、皆で朱夏の部屋に向かった。



「じゃあ朱夏、また明日な」

部屋の前で、夕星は軽く手を振った。
相変わらず侍女らに取り囲まれたまま、朱夏はこくん、と頷いた。

「おやすみなさい。葵も」

「おやすみ」

葵も笑って手を振る。
部屋の中から、セドナがにこにこと微笑みながら、朱夏を迎えた。
朱夏を招き入れ、セドナは夕星に向かって意味ありげに笑いかけると、丁寧にお辞儀して扉を閉めた。

「・・・・・・ちくしょう、セドナの奴」

扉が閉まり、葵と二人になってから、夕星がぼそ、と呟いた。
訝しげに見上げる葵に、夕星は踵を返しながら、ため息をついた。

「俺が朱夏に触れられないのを、楽しんでやがる」

「ああ、あのかたが、夕星様の乳母殿ですか」

納得したように、葵がちらりと扉を振り返った。
むろん、扉はすでに閉ざされている。

「しかし、本当に朱夏のガードは堅いですね。そこまでしないと駄目なのですか?」

夕星と回廊を歩きながら、葵が言う。