楽園の炎

「ほぅ。良いことだぜ。いざというときにも、ちゃんと身体は動きそうだな」

にこりと笑って、夕星は朱夏の頭をわしわし撫でる。
憂杏が、苦笑いを浮かべた。

「でも、つくづく物騒な奴だなぁ。お前のそういう癖は、ほんとに兵士の本能だよ」

「憂杏だって、そういう風に動くでしょ。アルファルド人では珍しい、実戦経験のある人だよね」

呆れ気味に言う憂杏に、朱夏はふと思い出して彼を見た。

いろいろな土地を渡り歩く商人のほうが、アルファルドの兵士よりも戦う機会がある。
追いはぎや盗賊に襲われることも、少なくないからだ。
長年各国を渡り歩いている憂杏は、それこそ盗賊や海賊と戦った経験など、片手では足りないぐらいだろう。

「まぁな。でも、昔はともかく、今はさほど荒れてないぜ。それもこれも、ククルカンが国土を広げてくれたお陰だ」

「?」

「ククルカンが、散らばっていた小国を平定し、各地に知事を置いて、ちゃんと統治をしてくれているお陰で、物騒な輩(やから)が減ったのさ。ククルカン皇帝の選んだ知事は、さすがに外れはないって、もっぱらの評判だぜ」

へえぇ、と朱夏は、憂杏の話に感心しつつ耳を傾けた。

「さぁ、それではそろそろ、お休みなさいませ。皆様、お疲れでしょう」

ラーダが、ぱんぱんと手を打つ。
扉が開いて、レダを初めとする武闘派の侍女が入ってきた。