楽園の炎

「葵王は、父上のお気に入りだからなぁ。それに、小さい国とはいえ次期王だろ。もうちょっと堂々としててもいいんだぜ」

お茶を飲みながら、夕星が言う。
だが葵は、う~んと眉間に皺を刻んだ。

「ま、素朴なところがまた、女子(おなご)にはたまらんツボなのかもしれんがな」

「拗ねるなよ。いい歳して、大人げない奴だなぁ」

憮然とカップを傾ける夕星に、憂杏が茶々を入れた。

「憂杏は、ナスルと同じ部屋にいられるからいいよな。俺だって、朱夏のことが心配なのに」

相変わらず不機嫌顔で、ぶつぶつ言う。
ラーダが、納得したように、ああ、と頷いた。
アリンダ皇子のことを言っているのだ。

「確かにナスル姫様のご結婚を、まだ正式には認めていないのに、憂杏さんと同じ部屋を許したのは、アリンダ様のことを考えてのことだと、わたくしも気づきましたが。朱夏姫様は、だからこそ後宮の傍にしたのですよ」

「わかってるんだがな。自分で守れるもんなら、守りたいだろ」

夕星の横で、ちょっと照れながらも、朱夏はそっと己の腕をさすった。

皇帝陛下や皇后が、朱夏を気遣って部屋を奥にしてくれたのも、近衛隊が朱夏を気遣ってくれるのも、全てはアリンダ皇子の毒牙から守るため。
それでもなお、夕星は心配だと言う。

「・・・・・・ま、朱夏にはあいつに対して、斬り捨て御免と言っているから、大丈夫だと思うがな」

斬り捨て御免とまでは言われてないけど、と思いながら、朱夏は首から下げた守り刀を触った。

「これが本物の剣で良かった。あたし、さっきアリンダ様と会ったときに、無意識に腰に剣を捜してた。これからは皇帝陛下にお会いする機会も増えるから、あんまり今までみたいな格好はしてられないし、そうなると、大っぴらに剣も持ち歩けないもの」