楽園の炎

「そうだな。朱夏は女性らしい子じゃないしな」

「ちょっと」

すかさず朱夏は、夕星の背中をばしんと叩いた。
あはは、と葵が笑う。
朱夏は笑い声を上げる葵にも、びしっと人差し指を突きつけた。

「あのね、人事みたいに笑ってるけど、葵だって同じようなこと言ってるのよ。あたしは葵のお付き武官だったんだから、ずっと一緒にいたじゃない。同年代の女性がいないって、どういうことよ」

はた、と笑いを引っ込め、葵はぽりぽりと頭を掻く。

「そういえばそうだね。だって、侍女だって内宮の廊下で椰子の実投げなんかしないよ? 普通に僕より、凶暴だったじゃないか」

でもちゃんと、僕は朱夏を女の子として見てたけど、と小さく呟き、葵は、にこ、と笑う。

そうこうしているうちに、広大な庭に面した渡り廊下の向こうに、小さな小宮が見えてきた。

「この庭が、兵士らの訓練場だな。ほら、向こうに兵舎が見えるだろ」

ひょいと指差す方向に目をやれば、明るい灯がそこここに灯る大きな建物が見える。
その手前に、小宮はあった。
扉の前には、何人かの兵士が詰めている。

「これは、夕星様。おや、朱夏姫様、お可愛らしい格好ではないですか」

兵士が三人に気づき、声をかける。
近衛隊の面々だ。

「おおっ。こちらはアルファルドの葵王様ですな」

兵士の一人が葵を見て、すかさず膝を折った。

「葵王、こいつらが、近衛隊の面々だ。葵王も何か困ったことがあったら、こいつらに頼むがいい」

「ありがとうございます」