楽園の炎

鞘がないときから、首にかけていたのだ。
よく考えたら、危ないことこの上ない。

「そういえば夕星は、宝剣をなくしたんだって? 全く、相変わらず驚くようなことをする奴だ」

皇帝の言葉に、夕星はまた軽く肩を竦めた。

「兄上にも言いましたが、宝剣をなくしたお陰で、朱夏に会えたんです。立派に役目は果たしてくれましたよ。守り刀を大事にしてくれてるんだから、それでいいでしょう」

「仕方ないのぅ」

それからククルカンの風土や、大祭について話し、それなりに無事顔合わせが終わって、晩餐会はお開きとなる。

「ね、憂杏のところに行ってもいいかな」

扉を出たところで、朱夏は夕星の袖を引っ張って言った。

「そういや、憂杏はどこに? ナスル姫様も一緒にいるのかな?」

葵が思い出したように、きょろきょろと回廊を見回した。

憂杏は本当に商人なのだし、性格からいっても重臣の前に出るようなことは、頑として拒むだろうが、ナスル姫は、今はまだ『姫君』である。
本人はすっかり商人のつもりだが、まだ正式に憂杏の元に嫁ぐことは、認められていないのだ。

「う~ん、そういや一緒にいるのか? ・・・・・・いやでも、一人にはさせないはずだから、きっと一緒にいるだろうさ。二人ではないだろうが」

言いながら、夕星は回廊を歩いていく。
朱夏も葵も、その後を追った。