楽園の炎

「ははは。何と、女性の武官とな。アルファルドの兵士の質が知れようというもの。葵王も、女性に守られるなど、恥とお思いなされよ」

皇帝が鋭い目を向けたほうを見れば、重臣たちを掻き分け、一人の男性が、こちらに歩いて来ていた。
身なりから、相当な身分だと知れる。

男は二人の前で立ち止まると、葵を一瞥し、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
そして、横にいる朱夏に視線を転じる。

「ほぅ。これが、夕星皇子の選んだ女か」

ねっとりとした視線を、朱夏の身体に這わす。
ぞく、と怖気が走り、思わず朱夏は、無意識に左手で己の腰の辺りを探った。

癖で、剣を捜したのだ。
だが当然、今は腰に剣はない。

「小娘のように見えますな。ふん、宰相ともあろう者が、野をふらふらしているうちに、己の立場も忘れて、適当に選んだのでは?」

あまりの物言いに、葵の顔が変わる。
だが、葵が口を開く前に、皇帝が朱夏の前に立った。

「お前こそ、少しは礼儀を守ったらどうだ。そもそも、人のことが言えるのか?」

しばし、皇帝と男の間に、険悪な空気が流れる。
皇帝の発する怒気を彼の背中に感じ、朱夏は思わずよろめいた。
葵も、皇帝の気に呑まれている。

おそらく、怒気を向けられている男も。
明らかに怯んだような表情を見せ、口をつぐんでいる。