楽園の炎

「さ、じゃあ行こうか。父上もお待ちかねだ」

そう言って、大広間の扉の両脇に詰めていた兵士に合図をする。
兵士が恭しく扉を開くと、目も眩むほどの光がこぼれ、朱夏を圧倒した。

夕星に手を取られて中に入ると、皆の視線が一斉に突き刺さる。
公式な晩餐会なのだろう、明らかに重臣とわかる者ばかりだ。

朱夏は思わず夕星にしがみつきながら、竦みそうになる足を懸命に動かした。

「おお朱夏姫。お綺麗に支度したものだな」

顔を上げると、皇太子がにこにこと笑って立っていた。

「紹介しよう。これが私の正妃、ララと、娘のニオベだ」

皇太子の横には、少し恰幅の良い女性と、つり目の女の子が控えている。
朱夏は膝を折ろうとして、夕星に止められた。

「その武官式の挨拶の仕方、やめるようにしないとな。こう、ホレ。衣装を摘んでだな・・・・・・ニオベ、見せてやれ」

夕星に言われ、ニオベ姫はちらりと朱夏を見、一歩前に出ると、スカートを摘んで優雅にお辞儀してみせた。

「ククルカン皇太子第一皇女、ニオベですわ」

六つぐらいだろうか。
まだまだ幼いばかりだが、いっぱしの自己紹介をし、にこりと笑う。

さすが、大国の皇太子の娘である。
幼いとはいえ、堂に入った挨拶だ。

「朱夏と申します。よろしくお願いします」

歳の差も忘れ、朱夏はニオベ姫に頭を下げた。
そうさせるだけの威厳が、ニオベ姫にはある。