「・・・・・・暖めてやろっか?」

ぱち、と朱夏が目を開けると同時に、夕星はするりと布団の中に入ってきた。

「ちょ、ユ、ユウっ」

「また高熱でも出されたら、敵わんからなぁ」

暴れる朱夏をものともせず、夕星は朱夏を腕の中に閉じ込める。
砂漠で夕星と一緒に寝るのには慣れたはずだが、船旅でしばらく離れていると、元に戻ってしまったようだ。
どきどきと、胸が早鐘を打つ。

「ほらほら、またそんなに堅くなって。何も素肌で暖めようなんて思ってないから、安心しなって」

「ななな、何言ってるのよぅっ」

「素肌同士が、一番暖まるんだぜ?」

ひいぃぃっと、朱夏はパニック寸前だ。
腕の中で茹で蛸のようになる朱夏に、夕星は、あはは、と明るい笑い声を上げた。

「全く朱夏は、相変わらず初心(うぶ)いなぁ。ほんとに、そんなことで初夜を迎えて、大丈夫かねぇ」

「そ、そのときはちゃんと、あたしだって覚悟してるものっ」

「そう願う」

にやりと笑って、夕星はもう一度、ぎゅ、と朱夏を抱きしめた。

「さ、さっさと寝ろよ。悪くしたら明日からは、朱夏とは引き離されるかもしれんから、甘えられるのは今夜だけだぜ」

え、と朱夏は、顔を上げる。
夕星は思いきり憂い顔で、大きくため息をついた。