夕餉を食べながら、アルに憂杏に聞いた、葵とナスル姫のことを話すと、アルは、やっぱり、という反応をした。

「やっぱりって、アル、知ってたの?」

自分が憂杏から聞いたときの驚きが大きかったため、気負って話したわりには、アルの反応が薄かったので、朱夏は拍子抜けしてしまった。

「知っていたわけでは、ありませんが。でも、年頃の姫君が、同じ年頃の王子のいる他国に来るなど、お見合い以外の何がありましょう」

朱夏の器にスープを足しながら、アルが当たり前のように言う。
朱夏はただ、ぽかんと立ち上る湯気を見つめていた。

「そうなんだ・・・・・・。それは、葵もわかってたのかな」

「どうでしょうね。葵王様も、そこまで考えてなかったかもしれませんわよ。すでにこの国は、ククルカンの属国ですから、今更政略結婚の可能性など、ないと思っているような気もしますし。それに」

アルは器を朱夏に手渡し、一旦言葉を切ると、悪戯っぽく笑った。

「葵王様は、朱夏様のことが、お好きなのでしょうし」

アルから受け取った器を持った手を宙で止めたまま、朱夏は固まった。
目だけを動かして、アルを見る。

「・・・・・・へ?」

しばらくアルを見つめた後で出た間抜けな言葉に、アルが首を傾げる。