楽園の炎

「とんでもない。これは、今回のために新調した外套じゃないですか。朱夏様こそ、きちんと外套を着ていないと、またお熱を出されますわよ」

「いいのよ。あたしはこの陸路は輿だそうだから、濡れないもの。輿の中で、毛布にくるまっておくわ」

脱ごうとするアルに、無理矢理外套を押しつけながら、朱夏は周りを見渡した。
アシェンが、兵士を一人連れて、こちらに歩いてくる。

「あ、アシェン様。あの、またアルをお願いしても、よろしいですか?」

アルに外套を押しつけたまま、朱夏が言った。
アシェンは当然、といった風に、深々とお辞儀する。

「ええ。そのつもりで、お迎えにあがりました。朱夏姫様も、早く輿にお乗りください。濡れてしまいますよ」

「その通りですわよ。さぁさぁ、この外套は、朱夏様がお使いください」

アルがぐいぐいと外套から逃げつつ、朱夏を急かす。
朱夏は、もぅ、と呟くと、不意にアシェンを振り向いた。

「アシェン様。アルは長くアルファルドで暮らしていたので、多分こういう気候に、慣れておりません。なのに、強がって外套を着ないんですよ。何とか言ってやってくださいな」