楽園の炎

次の日の明朝、予定通り、船はククルカンの港に入った。
出発の準備ができるまで船室にいた朱夏たちは、いざ外に出てみて、あまりの寒さに固まった。

「ううっ、何この寒さ。まさに氷室の中じゃない」

「朱夏、外套作ったんだろ。何で着てないのさ」

ぶるぶる震えながら、朱夏と葵はよろよろと船を下りる。
寄り添って震えている二人に、呆れたように夕星が近づいてきた。

「大袈裟だなぁ。こんなん、まだまだ序の口だぜ。葵王、大丈夫か?」

「む~・・・・・・。いえでも、頑張ります」

しゃきんと姿勢を正す葵に、夕星は雨用の外套を渡した。

「ほら、これを着な。ちょっとはマシになるぜ」

「ありがとうございます」

葵が外套をつけている間に、朱夏は周りを見渡して、アルを捜した。
少し離れたところに、同じように外套をつけているアルの姿を見つける。

「アル!」

叫んで駆け寄り、ばさ、と自分の外套をかける朱夏に、アルは驚いたように振り向いた。

「まぁ朱夏様。何やってますの。濡れますわよ」

慌てて持っていた布で、朱夏の髪を拭く。

「何って。アル、寒いでしょ? こんな気温、慣れてないじゃない。これ貸してあげるから、着てて」