楽園の炎

朱夏は今回の旅用に作った、冬用の外套を引き寄せた。

「これ、アルに貸してあげる。あたしは輿なんだから、毛布でも引っ張り込んでりゃいいでしょ」

よいしょ、と外套を抱える朱夏に、まぁね、と呟き、夕星は一勝負終えたナスル姫から、ゲームの駒を取った。

「じゃ、ナスルと朱夏は、一緒の輿でいいか。一人で籠もってるのも、つまらんだろ?」

「わ、そうしましょ。楽しそうだわ」

ナスル姫が、嬉しそうに朱夏の手を取った。
ナスル姫がいれば、輿の乗り方のコツも、教えてもらえるだろう。

「ねぇ葵。葵は、大丈夫なの? 馬で移動するの?」

今まで特に体調を崩すこともなく、順調に旅を続けているが、葵こそ生粋のアルファルド人だ。
条件は朱夏と同じはず。
朱夏は少し心配になって、皇太子の横にいる葵に聞いた。

「うん。僕は一応男だし、輿に乗るのは、ちょっとねぇ。皇太子様も馬で移動してらっしゃるのに、僕が輿に乗るのは、変な話だろ。大丈夫だよ、僕は朱夏より、身体は丈夫みたいだから」

今まで朱夏に負け通しだった葵は、朱夏よりも強いところがあることが、嬉しくてしょうがないようだ。

「今はそうだけどさ。無理しないでよ」

「倒れたら、朱夏と代わってもらうよ」

あはは、と笑い、葵はひらひらと手を振った。