楽園の炎

「あ、ええ。ア、アル殿が、薬草で匂い袋を作ってくださいましたので」

心なしか、ちょっとぎくしゃくと、アシェンは己の首にかかる小さな袋を示した。

「ほぅ?」

興味を示したように、皇太子が匂い袋に鼻を近づける。

「ふ~む。すっとする匂いだな。これが、そんなに効くのか」

「ええ。素晴らしいです」

そう言って、アシェンは匂い袋を大切そうに握りしめた。
夕星が、椅子に座りながら、こそりと朱夏に耳打ちする。

「随分進展したようだな。前までは『アルシャウカット殿』だったのに。仲良くなったんだろうか」

そういえば、と朱夏もちらりとアシェンを見た。

「どうだろう。でもアルはよく、アシェン様の面倒を見てるようだし。打ち解けたのかもね」

「友達になったのなら、大したもんだ」

夕星は言いながら、横の机で憂杏とボードゲームをしているナスル姫の額に手を当てた。

「お前も、体調は崩してないか? 明日からは、無理しないで朱夏と輿を使えよ」

ええ? とナスル姫は、不満そうに唇を尖らす。

「大丈夫ですわよ。わたくしは商人です。輿なんて、身分的にもおかしいでしょ」

「駄目だ。あと二日ぐらい、我慢しろ。父上にお会いする前に高熱でも出したら、絶対結婚なんて、許してもらえないぞ」

ぐ、とナスル姫が押し黙る。
憂杏も、無理するな、と輿を勧める。