楽園の炎

「今でも大分寒いだろ。陸に降りたら、もっと寒いぜ。そんな中を、雨に打たれながら二日間も進んで、朱夏、大丈夫かな」

そう言われると、朱夏も自信はない。
砂漠でも体調を崩したのだし、また違う気温の中では、どうなるかわからない。

う~ん、と朱夏は、夕星に寄り添ったまま唸った。

「やれやれ・・・・・・」

顔を近づけて、小さな窓を仲良く覗き込んでいる夕星と朱夏を眺めながら、皇太子は呟いた。
そして、傍で地図に見入っている葵を見た。

「葵王殿は、体調は何ともないか?」

「はい。船酔いもありませんし」

顔を上げて答える葵に頷き、皇太子は傍らに控えるアシェンに顔を向けた。

「しかし、疲れも溜まっているだろう。夕星の言うように、二日間も雨に打たれるのは心配だな。少なくとも朱夏姫は、輿に乗ったほうがいいだろう」

「は。ではそのように手配致します」

ふと皇太子は、不思議そうに、きびきびと動くアシェンを見た。

「・・・・・・お前、気分はどうだ? 結構揺れているが、よく立っていられるな」

船に乗った途端に、ぶっ倒れていた人間とは別人のようだ。
アシェンは皇太子の側近なので、今まで船に乗ったことも、数多あろう。
そのたびに酔い倒していたので、この雨の航行中に、普通に仕事ができているのが、信じられない。