楽園の炎

「・・・・・・そうなのでしょうか・・・・・・」

ぽつりと呟いたとき、船室からの扉が開き、アルが顔を出した。

「まぁアシェン様。このようなところにおられましたか。動いたりして、大丈夫なのですか?」

青い顔でへたり込んでいるアシェンに、駆け寄ってくる。
アシェンも慌てて立ち上がろうとした。
が、いきなり動くと、また吐き気がこみ上げてくる。

うう、とアシェンは手すりに掴まって、再び海に顔を突き出した。
だが幸い、先程あらかたぶちまけたので、出るものもないようだ。

顔を海に向けたまま、ぜぃぜぃ言っているアシェンに、アルはちょっと躊躇った後、そろそろと手を伸ばした。
背中をさすってみる。

「ご気分が悪いのでしたら、吐いてしまったほうが楽ですわ。背中をさすると、少しはマシですから」

アルの手が触れた瞬間、びびくんっ! とアシェンの身体が強張ったのがわかった。
手を触れていたアルはもちろん、見ていた憂杏にもわかったのだろう。
憂杏が、ぱっと回れ右して、肩を震わせた。

ひとしきり笑った後、そろそろと顔を戻すと、同じように薄笑いを浮かべているアルと目が合う。

「か、かたじけない・・・・・・」

大人しくアルに背中をさすられたままになっているが、やはり落ち着かないらしい。
さすられている背中が、やけに硬い。