楽園の炎

「ああ・・・・・・憂杏殿でしたか・・・・・・」

壁にもたれたまま、アシェンは生気のない目で憂杏を見る。
憂杏は今にも崩れ落ちそうなアシェンの身体を支えながら、真っ青な顔を覗き込んだ。

「・・・・・・そう言えば、船酔いとか? 随分酷いようですね」

「ええ。情けないことですが。ちょっと甲板まで・・・・・・」

憂杏に支えられて、アシェンは階段を上った。
その足取りは鉛のように重たげだが、何故か焦っているようにも思える。
憂杏は、彼が早く甲板に上がれるよう、手伝ってやった。

無事甲板に出ると、アシェンは一目散に縁に走り寄り、顔を突き出す。
そして、胃の中のものを、一気に海に吐き出した。
その間に、憂杏は適当な布を濡らし、アシェンに渡してやった。

「かたじけない」

ひとしきり腹の中身をぶちまけたアシェンは、憂杏の差し出した布で口元を拭うと、ふぅ、とその場にへたり込んだ。

「アルが、看病していたのでは?」

憂杏の言葉に、アシェンの顔が赤くなった。

「あ、え、ええ。恐れながら、夕星様からも朱夏姫様からも要請があったようで。しかし、朱夏姫様ともあろうおかたのお付き侍女殿の前で、このような醜態をさらすわけには、いきませぬ故」

あらぬ方向に視線を彷徨わせながら、アシェンが言う。