楽園の炎

朱夏と夕星の言い分に、皇太子も押し切られ、まぁそこまで言うなら、ということで、それ以上は何も言わなかった。

「じゃ、アル。頼んだわよ」

「はい、朱夏様」

朱夏に頭を下げてから、扉を軽く叩くアルに背を向け、朱夏と夕星はお互いにやりと笑った。

「アシェンの船酔いも、思わぬところで役に立ったな」

ぼそりと言った夕星を、朱夏が見上げた。
葵と話ながら歩く皇太子の後を歩きながら、夕星は朱夏に、楽しそうに説明する。

「アシェンは船に、めっぽう弱いのさ。いつものことなんだけどね」

「じゃ、もしかしてそんな姿、見られたくないかな?」

「かもな。でも、アルはどうかな。厳めしいだけじゃなく、弱いところもあるんだ。そんな一面に、女性は弱いんじゃないの?」

「ん~、どうかな。意外ではあるけど。悪くしたら、幻滅するんじゃない?」

「・・・・・・そうか。その可能性もあるな」

夕星は後ろを振り返ったが、当然もうアルの姿はない。

「ま、いいや。そうなったらそうなったで、縁がなかったってこった。船に弱いのなんて、上手くいってもいつかはバレるんだから」

あっさりと諦める。
朱夏も、軽くそうだね、と言い、皇太子らと一緒に、最奥の部屋の扉をくぐった。