楽園の炎

船の中央辺りにある扉に入ると、下に階段が続いていた。
皇太子の後について階段を下りると、廊下の向こうに夕星とアルの姿があった。

「夕星。朱夏姫を放り出して、何をしているのだ」

皇太子の言葉に振り向いた夕星は、顎で立っている前の扉を指して、にやりと笑った。

「アシェンが倒れたのですよ。それで、アルに看病をお願いしていたのです」

「ええっ! あのアシェン殿が?」

葵が叫び声を上げる。
朱夏も驚いた。

いかにも武人といったアシェンは、当然身体も鍛え上げられていたし、ちょっとのことでは病気など、しそうにない。
そのアシェンが倒れるなど、相当なことではないのか。

だが慌てているのは朱夏と葵だけで、夕星も皇太子も、落ち着いたものだ。

「大変じゃない! ユウも何落ち着いてるのよ。ほらアル、そんなゆっくりしてないで、早く行って差し上げなさい! そうだ、憂杏にお薬頼む?」

アルに駆け寄る朱夏の頭を、夕星がぽん、と叩いた。

「大丈夫だよ。ただの、船酔いだから」

皆の動きが止まり、しん、と沈黙が落ちる。

「船酔い・・・・・・?」

ややあって、朱夏が口を開いた。
葵も、首を傾げている。