楽園の炎

芳しい芳香を放つ鼈甲色の石に、朱夏はまた驚く。
見たこともないものばかりなので、当然価値も、さっぱりわからない。

迂闊に選べない、と思い、朱夏は夕星に助けを求めた。

「そうだな。黒真珠も似合いそうだが、確かにそれは、ちょっと大きいな。う~ん・・・・・・」

品定めをする夕星は、さすがに皇族だけあって、妙な遠慮はない。
朱夏のほうが、はらはらしてしまう。
そんな朱夏の耳に、ひやりと冷たいものが当たった。

「でしたら、これはいかがです?」

驚いて振り向くと、そこにはすらりとした長身を、ぴたりとしたチャイナドレスに包んだ、切れ長の目の女性が立っていた。
深く入った切り込みから覗く足が艶めかしい。

同性の朱夏が、彼女の色気にあてられて見惚れていると、後ろから夕星が、ぼんやりしている朱夏を覗き込んだ。

「ああ、それがいいかも。よく似合ってるぜ」

「・・・・・・えっ? え、えと、何?」

我に返り、朱夏はきょろきょろと周りを見回した。
その間に女性は、手際良く朱夏がよく見えるように、前に鏡を用意する。
そして、もう一度、朱夏の後ろに回った。

「黒真珠の耳飾りですわ。シンプルですけど、大きめなので、存在感はありますわよ」

片手で軽く朱夏の髪を上げ、もう片方の手で、耳元に耳飾りを添える。

---手も綺麗・・・・・・。この人も、商人なのかしら---

朱夏の知っている市の女といえば、大抵があまり化粧っ気もなく快活な性格の、あっけらかんとした人々だ。
このように匂い立つような色香など、無縁に思える。