楽園の炎

憂杏は、じっと朱夏を見つめ、ちら、と兵士たちの様子を見ると、一つ息をついた。

「あの皇女は、葵の結婚相手だ」

---えっ---

小さな朱夏の呟きは、声にならなかった。
同時に、心臓が跳ね上がる。

「だ、だって、そんなこと・・・・・・一言も・・・・・・」

「葵も、ついさっき聞いたところとか、そんなところだろうさ。元々今回のアルファルド訪問は、見合いのためだっていうぜ。ククルカン皇帝とアルファルド王の間では、そういう話があったようだ。姫はどうか知らんが、葵は多分、先入観なしに付き合えるよう、事前に話はなかったんだろ」

朱夏の動揺を抑えるため、憂杏は、努めて冷静に言った。
しばしの沈黙の後、憂杏は、朱夏の頭をぽん、と叩いた。

「俺も昨夜、母上から聞いたんだ。噂は掴んでいたがね。何となく、この国はのんびりしてるから、政略結婚など無縁のものと思っていたが、まぁ、おかしくはないんだよな。何か、姫もまんざらでもないようだし」

「・・・・・・ククルカン皇帝は、アルファルドとの結びつきを、そんなに重視しているの?」

どこか上の空で、朱夏は空を見つめた。
先の二人の様子が思い起こされる。

「それもあろうが・・・・・・。個人的な感情も、あるんじゃないかな。ククルカン皇帝は、初めてアルファルドに来たときから、葵を気に入っていた。葵は、言ってしまえば、美しいこの国をそのまま人間にしたような奴だ。綺麗な奴だろ、葵は」

こくん、と朱夏は頷いた。
確かに葵は、綺麗な顔をしている。
子供の頃など、もしかすると葵のほうが女の子っぽかったかもしれない。

今でこそ、背も伸び身体つきも男らしくなったが、相変わらず顔は優しげだし、全体的に中性的だ。
憂杏の言うように、そういう面で葵がこの国を象徴する人間だというのも、頷ける。