楽園の炎

「何か、女性に贈るのに良いものはないかな。ちょっと、その辺にはないものがいい」

夕星の言葉に、きょとんとした後、竜は意味ありげに、にやりと笑った。

「ほぅ? これはまた、珍しいご希望ですな。どこの姫君に贈られるのか」

「俺の婚約者だ。葵王のお付き武官だが、アルファルドで、可愛い奴を見つけてね」

照れもせずに、さらりと言う。
竜は、おおっと呟いて目を見開き、憂杏と葵は、自分には、こういうことはできんな、と、ひっそり思った。

「それは、おめでとうございます。いや、めでたい。しかし、夕星様のご婚約者となれば、一体どのような姫君なのか・・・・・・。想像できかねますな。是非ともお会いしてみたいものです」

竜も、ククルカン帝国の皇子でありながら、商人のふりをして各国を歩き回る夕星を知っている。
そういう夕星を知っている者の感想は、皆同じようだ。

「姫君・・・・・・というには、俺はいまだに違和感があるな」

「そうだね、僕も。とても泥まみれで剣を振るう朱夏が、姫君だとは思えないよね」

泥まみれで剣を振るう姫君・・・・・・。
そもそも普通に考えれば、葵のお付き武官というのも変だ。

「あのぅ・・・・・・。女性、なのですよね?」

竜が、言いにくそうに夕星に尋ねる。
先程から散々『姫君』とは聞いているが、周りの者の言うことを聞いていると、確かに女性とは思えない。

「当たり前だろ。俺は、男にゃ興味ないぜ」

軽く言い、夕星は竜の天幕の中をきょろきょろと眺める。
なおも首を傾げる竜に、憂杏も葵も、声を殺して笑った。