楽園の炎

「そうか。僕はあなたぐらいの女性ってのが、周りにいないから、余計新鮮なのかもしれません。侍女も多分、あなたよりも年上だし、朱夏は僕より年下だし」

「まぁ・・・・・・。でも、わたくしぐらいの女子(おなご)など、普通はそんなに珍しいものではありませんわ」

「いや、あなたは人を惹きつけるというか。驚きましたよ。こんな女性がいるのかと」

言いながら、葵はひょいと視線を苺鈴に向けた。
そして、再びどきりとする。

切れ長の目が、じっと見つめてくる。
こういう瞳を、なまめかしい、というのだろうか。
そんなことを考える頭は冷静なのに、目は苺鈴から離れない。

「・・・・・・わたくしなど、それこそ掃いて捨てるほどの価値ですよ。殿方の寝所に侍ることしか、できない女ですから」

ふ、と目を伏せた苺鈴に、葵は慌てた。
慌てたため、彼女の言葉の後半部分には、ほとんど意識が行かなかった。

「そんなことは、ありませんよ。あなたほど魅力的な女性を、初めて見ました。何て美しいんだろうって・・・・・・」

言葉途中で、葵は我に返った。
同時に、苺鈴の顔が、みるみる赤くなる。
男の寝所に侍るのが仕事なら、このようなこと、言われ慣れているだろうに。

だが、そんなことを知らない葵は、苺鈴が真っ赤になって俯いているので、自分のほうまで恥ずかしくなってしまった。

苺鈴は、確かに権力者に媚びを売って生きてきたのだが、葵のように、純粋に褒めてくれる人というものには、会ったことがなかったのだ。
身分が商人ということで、いくら権力者に気に入られて閨に引き入れられても、蔑まれていることには変わりない。
遊び女と同じようにしか、見られないのだ。

苺鈴自身も、仕事と割り切っているため、特にそういった扱いに、屈辱を感じることもない。
だから、いくら閨で権力者が甘い言葉を囁こうとも、そこに心がないことぐらい、十分承知している。