楽園の炎

一方、取り残された葵は、しばらくどうしたものかと茫然自失で立ち尽くしていたが、竜がいろいろな天幕を回りながら、珍しい商品を説明してくれた。
さすがにあらゆるところで物を売っているだけに、説明も上手だ。

すっかり葵は、竜の話術に魅せられた。

「凄いですね・・・・・・。どれもこれも、アルファルドでは見たことのないものばかりです」

感心しつつ言う葵に、竜は微笑んだ。
一通り東のキャラバンの店を回ってから、竜は自分の天幕の前に置いた、小さな椅子を勧めた。

「少し休みましょう。どうぞ、東のお茶を用意させますので、しばしお待ちください」

そう言って、竜は天幕の中に引っ込んだ。
程なく、苺鈴がガラスの器を手に、天幕から出てくる。

「どうぞ。茉莉花茶というものですわ」

差し出された器からは、良い香りが漂っている。
よく冷えた爽やかなお茶で喉を潤し、葵は息をついた。

「美味しいお茶ですね。東のことは、本当に何から何まで、知らないことだらけだ。人も、何となく違うし・・・・・・」

「そんなに違いますか?」

苺鈴が言いながら、少し離れた横に座る。

「わたくしは今まで、いろいろな国を回ってきましたけども、肌の色の違いこそあれ、その他の違いなど、さほど感じませんでしたわ」

「僕が知らないだけなんだろうけど。何せ、アルファルド人と、あとはククルカンに属する国の人しか知らないし。ククルカンは広いけど、民族にあまり違いはない。あなたのように、何というか・・・・・・エキゾチックな人は、初めてです」

すらりとした細身の長身に、真っ直ぐな漆黒の髪。
切れ長の目に薄い唇。

具体的に、どこがどう、とは上手く言えないが、今まで知らなかった容貌だ。
抜群にスタイルが良いとは、こういう人のことを言うのだろう。