楽園の炎

昼まで寝ていた二人は、朝昼兼用の食事を摂った後、ナスル姫の案内で、宮殿内を散策した。

「こじんまりしてるけど、なかなか面白い造りでしょう?」

入り組んだ回廊を歩きながら、ナスル姫が言う。
コアトルの宮殿内は、回廊が複雑に走っていて、迷宮のようだ。

「昔はよく、ここでお兄様とかくれんぼしたの。かなり難しくて、面白かったのよ」

「そういえば、かくれんぼは得意って・・・・・・言ってたね」

敬語にならないよう、意識して喋るので、朱夏はどうしてもゆっくりとした喋りになる。

「ユウも、ナスル様は人を見つけるのが抜群に上手いって、言ってた」

さすがに呼び捨てにする勇気はない。
とりあえず、『姫』は取ることに成功した。

「でもねぇ。お兄様もなかなか隠れるの、上手だったし、わたくしが隠れる番とかでも、何だか一人になるのは怖かったから、捜すのは必死になるし、隠れてたら泣いてしまうし」

「・・・・・・あたしもよく、葵から隠れてたけど。あ、そういえば、葵もよく泣きながら捜してたなぁ」

「朱夏も葵王様と、かくれんぼしてたの?」

意外そうに、ナスル姫が振り返る。
朱夏はしそうだが、葵がそういうことを、しそうには見えないのだろう。

「ナスル様は、今の葵しか知らないものね。泣き虫だったんですよ。昔は稽古中でも、よく泣いてたもの」

さらっと話すと、ところどころ敬語が出てしまうが、大分慣れた。
ナスル姫も、これぐらいなら突っ込むこともしない。
そうなんだ、と目を丸くした。