「朱夏様ぁ~。いい加減に、起きたらどうですかぁ~?」

かけられた声に、朱夏はうっすら目を開けた。
すっかり高くなった日が、部屋の中を明るく照らしている。

朱夏は寝転んだまま、ごしごしと目を擦った。
大あくびをし、のんびりと口を開く。

「あ~、よく寝た。朝かぁ~」

「何が朝ですか。もうお昼ですわよ」

ふかふかの寝台に気持ちよくごろごろしていた朱夏は、アルの言葉に、がばっと跳ね起きた。
窓の外に目をやれば、確かに朝の光ではない。
真っ昼間の、強い日差しだ。

「ええっ? わわっ、全然気づかなかったわ! 寝過ごしすぎ! ね、もう皆起きてるの? もう~、アル、何で起こしてくれないのよ~」

「あまりによくお眠りでしたから。正妃様も、お疲れでしょうから寝かせて差し上げなさい、と仰ってくださいましたし。それに、朱夏様は二日目に、高熱を出されたばかりじゃありませんか。船に乗る前に、しっかりお身体を休めないと」

慌ててアルの用意した水盆で顔を洗った朱夏は、ふと横の寝台を見た。
うう~ん、と小さく呻いて、ナスル姫が寝返りをうつ。

「あ、ナスル姫様も、まだ寝てらっしゃるのね」

ちょっと安心し、朱夏は顔を拭きながら、ナスル姫を覗き込んだ。