楽園の炎

結局ナスル姫と一緒の部屋で寝ることになった朱夏は、そこでアルやレダ、その他この宮殿の侍女らと、遅くまで話し込んだ。

話は己の色恋話から、夕星の昔話へと発展する。
今はラーダもいないため、皆好きにお喋りに花を咲かせている。

「こちらにおられた頃の夕星様は、それはそれはモテておりましたわよ。十か十一でしたかしら。わたくしたち侍女は、争って夕星様のお世話をしたがったぐらいです。でも当時夕星様は、皇帝陛下のご側室様に無体なことをされた直後だったので、女性が苦手というか。怯えられておりましたわ。ただその怯えを悟られてはいけないと思ってらっしゃったのか、気丈に振る舞おうとするお姿が、また子供ながらに可愛くて」

「ナスル姫様の手を引いて、中庭をよく散歩しておりましたの。何だかお二人が歩く姿は、何とも言えない可愛さでしたわ」

侍女らの話に、はぁ、と朱夏はただ聞き入るばかりだ。
侍女らの語る夕星像は、今の破天荒ぶりからは想像できない。
どう聞いても、純情可憐でナイーブな皇子様だ。

別人じゃないの、と言いたくなる。

「ナスル様が、かなり夕星様のお心の支えになったのではないでしょうか?」

「そうかしら?」

一人の侍女が言ったことに、ナスル姫は首を傾げる。
当時ナスル姫は三歳ぐらい。
それこそ記憶も曖昧だろう。
だが侍女らは頷き合う。

「そうですわね。ナスル様がおられなかったら、夕星様は、もっと塞ぎ込んでおられたのではないかしら」

「『兄たま、兄たま』と走り回るナスル様は、ほんにお可愛らしくて、わたくしたちも心和みましたもの」