楽園の炎

知事は夕星・ナスル兄妹を可愛がっていたこともあり、アリンダとの確執のことにも詳しい。
アリンダの母親の死後、しばらく兄妹は、ここで静養していたこともあるのだ。

「うむ・・・・・・。あ奴を宮殿に置いておくのも厄介だが、目の届かないところにやるのも、確かに避けたい。コアトルの知事など、奴にいらぬ力を与えるだけだからな」

皇太子も、アリンダをコアトルに派遣する考えはない。

「そうですな。夕星が、一番叔父上の跡を継ぐには最適か・・・・・・。夕星なら、私も安心できる。最近力をつけてきているという海賊も、夕星の近衛隊を配備すれば、上手く対処できるでしょう。なるほどなぁ・・・・・・」

腕組みし、眉間に皺を刻んで、皇太子は考え込む。
首都での宰相の地位さえ考えなければ、夕星ほど最適な人材はいないのだ。
能力的にも、彼の希望にも、ぴたりと合っている。

「夕星様が跡を継いでくださるなら、私も安心して隠居できます。朱夏姫様の祖国にも近いですし、正妃も喜んでお世話することでしょう。首都では何かと気疲れするでしょうが、ここは我々が一番上の身分ですから、夕星様が来てくだされば、夕星様が頂点です。誰に気兼ねすることもなく、朱夏姫様ものびのび生活できましょう」

「うむ。子ができれば、炎駒殿もすぐに見に来られるしな。夕星と喧嘩しても、朱夏姫は即実家に帰ることができるし」

「だから、何なんですか、その例えは」

知事の言葉にも押され、皇太子が肯定的な意見を述べつつ、嫌味を挟む。
夕星は不満そうに文句を言ったが、すぐに笑顔になって、知事に頭を下げた。

「では叔父上。是非ともコアトルの次期知事には、俺を考えておいてください。首都に帰ってから、父上に報告します」

知事も笑顔で、夕星に手を差し伸べた。

「よろしくお願い致します。長年の夢が、叶った感じですな。皇帝陛下の良いお返事が聞けること、期待しております」

差し伸べられた手を握り、夕星は再度、頭を下げた。