楽園の炎

ほぅ、と呟き、とりあえず知事は、正妃とナスル姫、憂杏、朱夏と葵を送り出し、あとは人払いをする。

扉が閉まると、知事は自らグラスを取り出し、琥珀色の酒を注いで、皇太子と夕星に差し出した。
かちりと三人は、軽くグラスを合わせた。

「叔父上。跡継ぎのこと、叔父上には何か、考えがあるのでしょうか」

夕星が、口火を切った。
知事はちらりと皇太子を見、グラスを置くと、首を振った。

「いえ。ゆくゆくはやはり、養子をもらうことになりましょうが、具体的には」

「俺が立候補しても、よろしいでしょうか」

勢い込んで言う夕星に、知事はぽかんとする。

「はい? い、いえ・・・・・・立候補も何も、夕星様は、宰相の位におられるかたではありませぬか」

もっともな意見を言う。
夕星は、隣の皇太子に視線を転じた。

「確かに俺は、今は宰相の位にあります。でも、先にも兄上に言ったように、あまり朱夏をアルファルドより遠ざけたくない。アリンダのこともあります。それに、コアトルの治世は、そう簡単なものではありますまい。後釜も、簡単に見つかるものでもないでしょう?」

「・・・・・・と、夕星が言っておるのですよ」

やはり難しい顔で、皇太子は唸るように言った。
知事はぽかんとしたまま、しばらく皇太子と夕星を見つめていたが、やがて息をつき、視線を落とした。

「夕星様が、私の跡を継いでくださるなら、願ってもないこと。私としても、もっともお願いしたいおかたです。今のままでは、有力貴族から人材を選出するしか、方法がありませぬし」