楽園の炎

「あら。よくおわかりになりましたね」

ナスル姫が、不思議そうに言う。
だが正妃は、ほほほ、と笑った。

「だって、ククルカン式のお衣装ではありませんか。朱夏姫様は、アルファルドのかたでしょう? アルファルドのかたは、滅多にお国を出ませんから、他国の衣装なども、手に入らないでしょう。着る必要も、ありませんもの」

なるほど。
さすがに貿易都市を治める知事の妃だけある。
どこか閉鎖的な、砂漠の中の小国のことまで知っている。

「叔母上、無理はしないでいいですよ」

夕星が一応遠慮するが、正妃はまた、ほほほ、と笑って軽く手を振った。

「無理などでは、ありませんよ。わたくしはそんなに、することはないのですもの。娘もおりませんし、こういうことができるのは、楽しみなのですよ」

そう言って、正妃は、にこりと朱夏に微笑みかけた。

「では、適当に作って差し上げなさい」

知事は正妃に言うと、手を打って侍女らを呼んだ。

「お疲れではありませんか? 部屋を用意しておきましたので、夕餉まで、ごゆっくりとなさいますか?」

何日か滞在するということは、すでに連絡しているようだ。
この宮殿の侍女が何人か入ってきて平伏する。

「そうだな・・・・・・。いや、ナスルたちは、叔母上と一緒に、服を作りに行くがいい。お前たちのものはともかく、とにかく憂杏殿のものを作っていただかないと。葵王殿も、一緒に行ってみるがいい。なかなか面白いものだよ」

皇太子が、ちょっと考えて提案する。
そして、知事に向かって、姿勢を正した。

「叔父上には、今後のことで、ちょっとご相談したいことがあります」