楽園の炎

皇太子たちが宮殿の居間に腰を落ち着けた頃に、夕星が戻ってきた。
夕星は部屋に入るなり、真っ直ぐに知事の元へと駆け寄る。

「叔父上、ご無沙汰しております」

「おお夕星様。一段と立派になられましたな」

知事も立ち上がって、嬉しそうに夕星の手を取った。
そして、視線を夕星の後ろの朱夏に滑らす。

「あのかたが、夕星様の花嫁ですか」

一知事とはいえ、やはりククルカン皇家の者の威厳は半端ない。
朱夏は慌てて、その場に膝を付いた。

「アルファルド王側近・炎駒が娘、葵王付きの武官・朱夏にございます」

おや、というように知事は、自ら朱夏の前に膝を付き、同じ目線の高さになった上で、優しく言った。

「あなたは夕星様の妃だ。そう堅くなる必要はないのだよ。言うなれば、あなたと私は対等なのだから。それにしても、なるほど、炎駒殿の娘さんか・・・・・・」

懐かしむように朱夏を見、手を取って立たすと、椅子を勧めた。

「あの、父を、ご存じなのですか?」

夕星の横に座りながら、朱夏は知事に問うてみた。

「ああ。この町に赴任したときに、アルファルド王の名代として、炎駒殿がご挨拶に見えられた。当時はアルファルドも、ククルカンの属国ではなかったからね。それに、王は何か、お身体を悪くされていたようだし」

「あ、もしかして、十年ほど前の話ですか? 確かにその頃、父は病気ではないですけど、動ける状態ではなかったですね」

葵が思い出したように、口を挟んだ。
朱夏は首を傾げる。

十年前といえば、朱夏は五つ。
記憶など曖昧だ。
が、葵は何か思い当たることがあるようだ。