楽園の炎

その間に皇太子に挨拶しているのは、一際豪華な衣装をまとった、初老の男性だった。
柔和な顔立ちだが、立ち振る舞いからすぐに、彼がこの町を治める、ククルカン皇帝の弟君だと知れる。
朱夏も葵も、もちろん憂杏も、その場に膝を付いた。

「ああ、こちらがアルファルドの王太子ですな」

「葵王と申します」

頭を下げたまま挨拶する葵に、相変わらず優しげに微笑みかけ、知事は皆を促して、城門をくぐった。

「とりあえず、中へどうぞ。お疲れではありませんか?」

城門の中に入り、宮殿のほうへ歩いていくと、中から一人の女性が慌てたように走り出てくる。
その途端、ナスル姫が笑顔になって、女性に駆け寄った。

「叔母上!」

元気よく女性に飛びつく。

「まぁまぁナスル様。相変わらずですわね」

ナスル姫を抱きしめながら、女性が微笑む。
そして、そのまま皇太子に膝を付いた。

「ようこそ、おいでくださいました。ご挨拶が遅れ、申し訳ありません」

「いえ、お気になさらず。叔母上もお変わりなく」

皇太子がにこやかに挨拶を返す。

中庭を過ぎると、兵士たちは、おのおのの馬を繋ぎに行くために散っていく。
夕星は朱夏に手綱を渡し、自分は皇太子の馬の手綱を取った。

「兄上の馬は、俺が繋いできましょう。すぐに行きますよ。朱夏、おいで」

夕星は足早に、朱夏を連れて兵たちの後を追った。