楽園の炎

「何やってるんだ。いちゃいちゃするのは、二人のときにしろよ」

「ちっ違うわよっ!」

朱夏が、慌てて夕星の顔を押しのける。
ち、と不満そうに呟き、夕星は、ひょいと顔を上げて、高台の城壁を見上げた。

「もうちょっとだな。この坂道を上がれば、すぐに城門だ」

見れば、少し先からは、なだらかな丘になっており、一本道が宮殿に向かって延びている。
坂道を上りながら、朱夏は次第に開けてくる眼下の景色を眺めた。

「結構上なのね。あ、あれが港?」

城門の前ぐらいまで進めば、港までが一望できる。
朱夏は海自体を見たことがない。
思わず身を乗り出した。

「うわ、その後ろにずーっと見えてるのが、海よね? 凄い!」

「朱夏は海、初めてか。ほら、あっちの端っこに、でかい船があるだろ。あれに乗るのさ」

夕星の説明に、朱夏は興奮気味に海を見つめた。
ずっと広がる水平線が、全て水ということからして、信じられない。

「ようこそ、いらせられました」

いきなりかけられた聞き慣れない声に、食い入るように景色に見入っていた朱夏は、我に返った。
気づけば、皆馬から降りている。

「夕星様は、相変わらずお元気そうですな」

「叔父上!」

夕星が叫び、馬から飛び降りた。
すぐに朱夏に手を差し伸べ、降りるよう促す。