楽園の炎

「そういえば、葵は? 葵は何ともないのかしら」

「あ、そういえばそうね。さっきまで、葵王様は憂杏と一緒に、天幕の外にいたけど」

ててて、とナスル姫が、布を跳ね上げて外に出て行く。
すぐに複数の足音が聞こえ、ナスル姫に続いて、葵と憂杏が入ってきた。

「朱夏、大丈夫なのかい?」

「お前が最初にくたばるとはなぁ」

心配そうな葵とは対照的に、どこかのんきに憂杏が顎を撫でながら言う。
朱夏は、よいしょ、と夕星の手を借りて上体を起こすと、じろりと憂杏を睨んだ。

「くたばってなんかないわよ。不吉な言い方、しないでよね」

「はは。元気じゃねぇか。ま、お前のことだ。すぐ治るさ」

旅慣れているだけに、多少のことでは焦らない。
憂杏は豪快に笑い飛ばすと、小さな袋を投げて寄越した。

「煎じ薬だ。単なる風邪だろうさ。それ飲んで眠りゃ、明日には治ってるぜ」

さすが憂杏。
簡単な薬も常備している。
皆、尊敬の眼差しで憂杏を見つめた。

「さすがですわ。何て頼りになるのかしら。やっぱり憂杏がいてくれれば、何の心配もありませんわね」

両手を顔の前で組んで、ナスル姫がのろける。

「はっはっは。よせやい」

きらきらした瞳を向けられ、憂杏が、がりがりと頭を掻く。
まんざらでもないようだ。

ナスル姫ののろけにも、耐性ができてきたらしい。
朱夏は温(ぬる)い視線を二人に向け、それから葵を見た。

「葵は? 大丈夫なの?」