楽園の炎

「駄目よ。まだ寝てなきゃ。ここに着く前は、朱夏、気を失ってたんでしょ? お兄様が血相変えて馬を走らすもんだから、皆、ついて行くのに必死だったわ」

どんどん早くするしね~、と笑うナスル姫に、朱夏は申し訳ないやら恥ずかしいやらで、毛布を顔まで引き上げた。

ナスル姫の言うとおり、考えてみれば途中からあんまり記憶はない。
だがそれは、気を失ったとかいう重大事ではなく、ただ単に、うつらうつらしていただけのようにも思うのだ。

---馬上で眠っちゃうなんて。でも、ぼーっとしてたからだろうけど、揺れが心地好かったしなぁ。ユウにもたれてたから、安心感もあったし・・・・・・---

ぶつぶつと考えを巡らしていると、再び布がめくられ、夕星が入ってきた。

「気がついたか。大丈夫か?」

覗き込み、朱夏の額の布を少しどけて、手を当てる。

「まだ熱いな。寒くないか? 気分は?」

「だ、大丈夫。あの、ごめんね。皆の足を、乱しちゃったね」

心配そうに問う夕星に、照れくさく思いながら、朱夏は布団から目だけを出して、謝った。
が、夕星もナスル姫も、そんなことは一様に気にしていない。

「気にすんな。おかげで予定よりも早く、オアシスに到着できた。大軍での砂漠越えは、いろいろ大変だからな。皆、早く休みたいのさ」

「そうよ。あんまり見るものもないもの。それに、やっぱりちょっと、お尻が痛くなってきちゃった。早く休憩に入りたかったし、ちょうど良いわ」

えへへ、とナスル姫は頭を掻く。
馬での移動は、結構お尻に来るものだ。

そういえば、朱夏よりもか弱そうなナスル姫は、この寒暖の激しい気候でも、何ともないようだ。
やはり万年温暖な国で育ってないからだろうか、と思い、ふと朱夏は布団から顔を出した。