楽園の炎

次の日は、夕星の言ったとおり、まだ空も白み始めない頃から出発したのだが、朱夏はぼんやりしたまま、夕星の腕に抱かれているだけだった。

どうやら昨日の冷気が、慣れぬ身体に相当な負担をかけたらしい。
時間が経つにつれて、頭にかかった靄が濃くなるような気がする。

初めはちゃんと前を向いて馬に乗っていたが、身体を支えることも辛くなって、落ちそうになったので、今は横乗りで、夕星にもたれている。

「・・・・・・横乗りなんて~・・・・・・初めてじゃないかしらぁ~・・・・・・」

ぼんやりと、朱夏が口を開く。
ひたすら寒い。
夕星が自分の外套でくるんでくれているが、震えが止まらないほどだ。

「ごめんねぇ~・・・・・・。ユウ、しんどいんじゃないぃ~?」

「気にすんな。ていうか、喋るなよ。ちょっと急いでるから、下手したら舌噛むぞ」

「ん~・・・・・・」

何となくべらべら喋ってしまいそうだが、朱夏はもぞもぞと外套に顎を埋めた。
馬上で身体の力を抜くなど、いつもの朱夏からしたら考えられないが、今は踏ん張ろうにも、力が入らない。

だが恐ろしくはない。
夕星の腕が、しっかり支えてくれているのだ。

「えへへ・・・・・・。何だか安心・・・・・・」

「うん、安心していいから、黙れって」

ぶっきらぼうに言う夕星に、朱夏は、へら、と笑いかけた。