しかし、寝台の前で足がもつれてしまう。
何せ、右手と右足が同時に出ている状態なのだ。
がちがちに固まったまま、寝台になど、上がれない。
朱夏は思いきり、寝そべっていた夕星の上にダイブした。

「いてて。何だ、どうしたんだ」

夕星が、驚きつつも朱夏を抱き留める。
薄い夜着からダイレクトに伝わる夕星の体温に、朱夏の身体はますます固まった。
心臓が、胸を突き破りそうだ。

「おい、朱夏? どうした? 足でも攣ったのか?」

倒れたままの姿勢で、石像のように動かない朱夏に、夕星が上体を起こして言う。

「うう・・・・・・ええっと・・・・・・」

最早言葉も上手く喋られない。
ただ全身が心臓になったかのように、朱夏の耳には己の鼓動しか聞こえない状態だ。

夕星は、そんな朱夏をじっと見、一つ息をつくと、勢いを付けて自分の横に朱夏を投げ出した。
横といっても、元々小さな寝台なので、人が二人普通に並ぶと、かなり窮屈だ。
そのため、夕星は朱夏を抱いたままだ。

さらに悪いことに、そんな狭い寝台なので、夕星が少し上になってしまった。
まさに押し倒された格好になり、朱夏は気が遠くなった。

軽いパニック状態で、朱夏は思わず、ぎゅっと目を瞑ってしまう。
すると朱夏の唇に、そっと何かが、軽く触れた。

恐る恐る目を開くと、至近距離から夕星が見下ろしている。
そして、再び軽く唇を重ねた。

状況が状況なだけに、朱夏の身体はびくんと過剰に反応したが、夕星の唇は、ほんの軽く触れただけで、すぐに離れた。