楽園の炎

明日が早いこともあり、皆食事を終えると早々に、それぞれの天幕に引き上げた。
アルもナスル姫付きの侍女らと仲良くなり、そちらの天幕に誘われていった。

ナスル姫は憂杏の天幕に、皇太子は葵を連れて自分の天幕に。
朱夏はそれぞれがそれぞれの天幕に消えていくのを見て、初めてそわそわし出した。
自分の天幕の前で剣の手入れをする夕星を見る。

「よし。さて、俺たちも寝ようか」

磨いた剣を一振りし、立ち上がった夕星に、朱夏は、かちんと固まった。
夕星は腰の鞘に剣を納め、入り口の前に立てかけた葦をくぐり、布を跳ね上げる。
その後ろ姿を、朱夏はただ、棒立ちの状態で見送っていた。

---こ、この状況って、あたし、ユウの天幕で寝るってこと? そ、そりゃアルもどっか行っちゃったし、ラブラブな憂杏の邪魔はできないし、このまま外に取り残されても困るけどさっ。でもでもでもっ! ユ、ユウの天幕って、どう見ても一人用じゃない。憂杏の天幕よりも小さいし、こんな中に寝台が二つもあるとは思えないわっ。まま、まさか・・・・・・そ、そういえばさっき、『俺たちも寝よう』って言った? 一緒に寝ようって、誘われた??---

突っ立ったまま、だらだらと汗を流しながら考えを巡らせる朱夏は、ひょいと天幕から顔を出した夕星と目が合った瞬間、鼓動が跳ね上がった。

「何やってるんだ。ほら、入れよ」

当たり前のように、手招きする。
朱夏は意味無く辺りに視線を彷徨わせ、夕星が不審に思うほど、たっぷりと間を空けた後、亡霊のようにゆらりと足を踏み出した。