楽園の炎

ああ、と朱夏は、皇太子を見た。
第二皇子・アリンダのことを言っているのだ。

その辺りのことは、侍女らも心得ているらしく、特に異議は唱えない。
ラーダが、こほんと一つ、咳払いをして口を開いた。

「実はですね。わたくしたち、密かに剣術や体術の稽古をしておりますの」

穏やかそうな侍女頭の言葉に、え、と皆が目を丸くする。
アル以外の侍女らは、少し誇らしげに小さく頷いた。

「ここにいる侍女は、わたくし含め、皆ナスル姫様付きです。中でも姫様の信頼の篤い者ばかりだと、自負しております」

「ええ。ククルカンに残してきた者の中にも、きちんと信頼している者はまだいるけど。ここにいる者たちは、特に信頼しているわ」

ラーダの言葉を受けて、ナスル姫が言う。
ラーダはにこりと微笑み、ありがとうございます、と頭を下げた。

「夕星様が、幾人か兵士をつけてくださっておりますが、やはり殿方では常にお側に、というわけには参りませぬ。少し前も新参の侍女が、アリンダ様に通じていたことが発覚しました。内側から裏切られたら、わたくしたちだけでナスル姫様をお守りしなければなりません。そうなったときでも対応できるよう、侍女であろうとも、強くならねば、と皆で相談し合ったのです」

「ははぁ。だから、ナスルにつけている兵が、妙な怪我をしていることがあったわけだな」