楽園の炎

「僕よりも強いですよ。兵士を束ねる隊長も、負けるほうが多いかもしれません。アルファルドで、一番かもしれないですね」

「それは頼もしい」

皇太子のみならず、その場にいる侍女らも、尊敬の眼差しで朱夏を見る。
皆から見つめられ、朱夏はぶんぶんと両手を振った。

「そ、そんな大層なものでもないですよ。大体、アルファルドは戦という戦を知らない国ですから。ままごとみたいなものです。実際、戦場に出てきた夕星様には、勝てませんし」

謙遜していると普通は思われるだろうが、そうでもない。
ままごと、というほどアルファルドの兵士が弱々しいわけではないし、稽古だってそれなりに厳しい。
仮にも王族を守る役目を仰せつかっている朱夏は、葵の言うとおり、並の男にも負けない程の強さはある。

だがやはり、だからといって実際の戦になっても強いか、と言われるとどうだろう。
実戦経験のある者は、やはり動きが違う。
確実に相手を仕留めることを第一に動く者と、抑え込むだけを目的とした者とでは、狙う場所も力も違うのだ。

アルファルドの誰より強い朱夏でさえ、夕星には歯が立たないように、戦の経験というものは、反射神経や体力に、大きく差を付けるのだ。

「いやいや、これで夕星に勝つようでは、ちょっと女性としてどうかと思ってしまうぞ。こいつに勝つ必要はない。しかし、こいつに嫁ぐ以上、女性といえども相当な使い手であるほうが、我々としても安心なのだ」