楽園の炎

「・・・・・・悪かったわね。別に遊び回ってたわけじゃないわよ。葵はひ弱だったから、退屈な手習いよりも、もっと自然に触れたほうが良いと思ったのよ」

朱夏が、つん、とそっぽを向く。
ふと、朱夏は笑い声を上げる皇太子を見た。

「そういえば皇太子様。皇太子様は、ご結婚なさっておられるのですか?」

ククルカンがアルファルドを平定してからの七年間、大きな結婚式というものは、なかった気がする。
ククルカン帝国の皇太子の結婚式となれば、それなりに盛大なものだろう。

平定されるまでは、アルファルドは砂漠にぽつんとある小さな国だったため、諸外国の事情には明るくなかったが、ククルカンの属国となってからなら、宗主国の皇太子の結婚という大事に、王や葵が動かないはずがない。

七年前というと、皇太子は十八。
十六の葵も、ナスル姫とお見合いしたのだし、結婚していても、おかしくはない。

「ああ。今の葵王殿と同じ頃かな、に、北方の姫君を娶った。まだ娘しかおらぬが」

可愛いものだな、と話す皇太子は、自然と表情が緩んでいる。

「兄上は、可愛がりすぎですよ」

「お前にも、娘ができればわかる。何ものにも代え難い宝だぞ。嫁になど、やりたくないなぁ。ああ、炎駒殿の気持ちがわかる」

しみじみと言う皇太子は、すっかり父の顔だ。
夕星は果実酒の杯を傾け、ちらりと朱夏を見た。