楽園の炎

「すみませんが、よろしくお願い致します。朱夏様付きの、アルシャウカットと申します」

アルが、手をついて深々とお辞儀をする。

「おお! これは失礼を!! それがし、皇太子殿下であらせられる、香々背男(かがせお)様の側近を務めさせていただいております、アシェンと申す者。以後、お見知りおきを」

あたふた、といった感じで、聞いたこともないような古風な挨拶を返す。
ふと見ると、夕星はもちろん、アルと一緒に給仕をしていた侍女までが、顔を背けて肩を震わせている。

「か、香々背男様、それがし、夜の巡回に参ってきます」

慣れないことに、いたたまれなくなったように、アシェンは、がばっと立ち上がると、皇太子に勢い良く頭を下げ、あっという間に去っていった。

「・・・・・・はは。緊張のあまり、あいつ、敬語がおかしくなっていたな」

夕星が口を開くと同時に、我慢できなくなった侍女らが、ぷくく、と笑い出した。

「全く、お前たちもあまりアシェンをいじるんじゃない。そういう態度が、返ってあいつを女性嫌いにしているんだぞ」

「あら、表立っていじっているのは、夕星様ではありませんか。わたくしたちは、ちゃんと堪えておりましたよ」

侍女らが笑いながら、皇太子の注意を受け流す。
もっとも皇太子も、注意をしているものの、笑っているのだが。