楽園の炎

「明日は砂漠越えだ。朱夏姫、体調は大丈夫か?」

皇太子に夕星、葵と朱夏に、憂杏とナスル姫。
それにアシェンやアルを加えて、天幕の前で夕餉を囲みながら、皇太子が朱夏に聞いた。

「ええ。まだほとんどアルファルドですし、全然大丈夫です」

「葵王殿はどうだ? 疲れてないか?」

「はい。楽しみな気持ちが大きいので、疲れは感じません」

皇太子は、どうやらアルファルドを出たことのない朱夏と葵が心配でならないらしい。
しきりに二人の様子を気にかける。

「大丈夫ですよ。葵王だって、それなりに鍛えてますし。まぁ確かに明日からは、ちょっとキツいかもしれませんが。ああ、そうだ。アシェン、明日から、そちらのアルを乗せてやってくれ」

夕星が、幾人かの侍女と共に給仕をしていたアルを指して言った。
途端にアシェンの身体が強張る。

「アルは朱夏の、大事な侍女だ。兵士に知り合いもいないし、お前が面倒を見てやってくれ」

「は、ははっ。そ、それがし、無骨者故、細やかな気遣いなどできませぬが、お困りのことがありましたら、何なりと」

ロボットのようにぎこちなく、アシェンが頭を下げる。
自分でも言っているが、相変わらず無骨そのものだ。

朱夏に挨拶したときも堅かったが、今はさらに、どこかぎくしゃくしている。
自分が女性の面倒を見なければならない、ということに、緊張しているのだろうか。