楽園の炎

「そ、それより。ナスル姫様のお使いって?」

話を逸らす朱夏に、さして気分を害するでもなく、夕星は、ああ、と呟き、再び朱夏の手を取って、扉に向かう。

「ナスルが部屋に来て欲しいって」

「お部屋に? どうしたのかしら」

それよりも、と、宝瓶宮を出てから、夕星は帰ってきたナスル姫を迎えた侍女らの反応が凄かったと、笑いながら話した。

内宮のナスル姫の元にいたのは、ククルカンからの侍女だ。
ずっとナスル姫に仕えてきた者らだろう。
『お姫様』としてのナスル姫しか知らないのだし、さぞかし驚いただろうことは、想像に難くない。

だが侍女の驚きは、何もナスル姫が平民の格好で戻ってきた、ということだけではないだろう。

「・・・・・・憂杏も、一緒にいたのよね」

「そう」

くくくっと笑う夕星の様子から、侍女の驚きがナスル姫の格好でなく、一緒に連れてこられた婚約者に向けてのものであるのがわかった。

「憂杏も、大変だよなぁ。どこに行っても、驚かれる」

「いい人なんだけどね。見かけが強烈か」

苦笑いを浮かべて、朱夏も夕星に同意する。
とはいえ、やはり侍女らの驚きようを想像すると、笑えてくる。

朱夏も夕星も、声を上げて笑いながら、ナスル姫の元に向かった。