楽園の炎

「いやぁ、姫君には・・・・・・見えないかな。ほんと、水の精霊と思った。町娘よりは気品というか、崇高といえば言い過ぎだが、そういう感じがあるが、深窓の姫君よりも・・・・・・俗っぽいというか」

「それ、褒めてるの? 喜んでいいのかしら」

微妙な顔をする朱夏に、ユウは明るく笑いかけた。
何となく気が楽になった朱夏は、きょろきょろと辺りを見回した。

「この辺りまで来ると、何もないのよね。もうちょっと行くと、砂漠だし。強いて言えば、向こうに少し行ったところに、星見の丘があるだけ」

「綺麗な名前の丘だな」

ゆるゆる馬を歩かせながら、ユウが遠くを眺めて呟いた。

「別に、そう決まってるわけじゃないけどね。あたしと葵が、昔にそう呼んでたの。周りに何もないから、夜は星がいっぱいに見えるの。凄い綺麗なんだよ」

朱夏の言葉に、ふ~む、とユウは、目を眇めて彼方を見る。
遙か遠くに、少し盛り上がったところがあるようだ。

「かなりあるな。あんなところまで、子供が二人で行ってたのか? 夜に? ていうか、相手は王子だろう。いいのか?」

極めて常識的なことを言うユウに、朱夏は肩を竦めた。