楽園の炎

「まぁ。折角頑張ってるのに、そんな風に言われたら、悲しくなるわ」

「あ、いや。そういう意味じゃない。わかってるよ。いきなり染まらんでもいいってことだから」

慌ててナスル姫を宥める憂杏を、夕星は相変わらずにやにやと意地の悪い笑みを浮かべて見た。

「ふふ。大変だなぁ。ナスルもあんまり、我が儘言うなよ。嫌われるぜ」

「誰がふってるんだよ」

何気に事を荒立てる夕星に、憂杏が非難の声を上げる。
と、にやにや笑う夕星の頭を、ごつん、と後ろからげんこつが叩いた。

「もぉ。あんまり二人を苛めないでよ。意地悪なんだから」

朱夏が、饅頭の包みを手に、じろりと夕星を睨んだ。
ナスル姫が、ぱっと笑顔になる。

「ざまぁごらんなさい。お兄様のほうが、そんな態度だと朱夏に嫌われてしまいますわよ」

べぇっと舌を出し、ナスル姫は、ててて、と朱夏に駆け寄った。

「朱夏、ごきげんよう。ね、これどう? 憂杏が買ってくれたの」

嬉しそうに、ベールを掴んでくるりと回る。
朱夏は笑みを浮かべ、ちらりと憂杏に視線を移した。

何だかんだ言っても、憂杏もナスル姫のことが好きなのね、と思い、嬉しく思う反面、この憂杏が、と思わないでもない。