楽園の炎

「おー、憂杏。早速仲良く買い出しか」

目についた店で、ナスル姫のベールを買っていた憂杏とナスル姫に、いきなり聞き覚えのある声がかかった。
顔を上げると、夕星がにやにやと笑って立っている。

「お前はまた・・・・・・。いい加減に商人のふりは、やめたらどうだ?」

「何だよ、憂杏まで兄上みたいなこと言って。いらん騒ぎは、起こさんにこしたことはないだろ」

肩を竦める夕星は、その辺にしっくりくる商人の出で立ちだ。
最早見慣れた、と思うが、果たして見慣れたのは、商人の姿のほうか、皇子の姿のほうか。

「ユウ一人か? 朱夏は?」

きょろ、と憂杏が周りを見渡す。
遙か向こうに、店の女将と談笑する朱夏が目に入った。

「相も変わらず、お兄様は。あんまりお一人でふらふらなさらないでくださいな」

先程買ったベールをつけて、ナスル姫が小言を言う。
夕星は笑いながら、ナスル姫の姿をざっと見た。

「大丈夫だって。朱夏もいるし。朱夏はアルファルド王太子のお付き武官なんだから、心強いだろ。・・・・・・ふ~む、まだまだなりきりかたは、俺には及ばんな」

「・・・・・・お前のなりきりかたは、普通じゃない。ずっと王宮暮らしのお姫さんが、いきなり商人になんて、なれるはずないだろ」

憂杏の突っ込みに、ナスル姫が、ぎっと振り返る。