楽園の炎

「だって、憂杏にとっても、この期間は保険じゃない」

ナスル姫も立ち止まり、見上げてくる。
憂杏はちょっと考えた。

確かにお互い、今の状態は研修期間である。
ナスル姫にとって、だけではない。

「そうだが・・・・・・。でも俺は、多分・・・・・・お姫さんが家事できなくても、気持ちに変わりはないと思うな。元々ほら、そんなできる、とも思ってないし」

元々初めのハードルが低いからな、と言って、にやりと笑う。
ぷぅ、と頬を膨らませ、それでも憂杏の横に並ぶと、ナスル姫は憂杏の腕に、自分の腕を絡ませた。

「じゃ、わたくしが頑張れば、憂杏から振られることは、ないってことね?」

「まずないな。でも、頑張り過ぎるなよ。そんなこの先ずっと頑張り通しでは、やっていけないんだからな」

「それが難しいのだけど。だって、憂杏のためだと思うと、どうしても頑張っちゃうのよ」

ぺたりと腕にくっついて言うナスル姫に、憂杏は照れ笑いを浮かべた。

「それは、めでたく俺のところに来てからにしなよ。今は、自分のため。そうだろ?」

「そうね、そうだわ。まずは、わたくしが自分で憂杏のところでもやっていけるかどうか、見極めないと」

小さな手を握りしめるナスル姫を見るにつけ、不覚にもめろめろになってしまう自分を感じてしまう。
憂杏は、気を紛らわせるべく、ごほん、と一つ咳払いをして、足を進めた。