楽園の炎

市に着くと、手綱を掴んだまま、憂杏は馬から飛び降りた。
すぐにナスル姫に手を差し出す。
ナスル姫は憂杏の手を取ったものの、高すぎて降りられないようだ。

「お姫さんぐらい、飛びついたところで、軽く受け止められるぜ」

そう言って、くい、と手を引っ張る憂杏に、ナスル姫は遠慮無く飛びついた。
言葉通り、憂杏は軽く受け止める。

「さ、じゃあ、とりあえず今日は、買い出しと商品の整理だな」

とん、と姫を降ろし、憂杏は市に入っていく。

「腹減ってないか? あ、結局ベール、忘れたな。何か買ったほうがいいかな」

大柄な憂杏と小柄なナスル姫では、当然歩幅も大きく違う。
憂杏はナスル姫の腰に手を添えて、自分の前に誘(いざな)った。

「ねぇ憂杏。憂杏は、お兄様が言ったように、わたくしに愛想尽かすかも?」

「な、何だい、いきなり」

いきなりの質問に、憂杏の足が止まる。