楽園の炎

「まぁ・・・・・・それなりにな。でも、いつも俺の根底には、旅があるからな。各地で出会った人と恋仲になっても、俺はその土地に留まらないだろ。だから、一時のものだっていう頭があるんだよ。あんまり真剣に、女子(おなご)と付き合ったことはないな」

「ま。遊びなんですの?」

ナスル姫の目が、ちょっと鋭くなる。

「いやいや、遊びではないよ。でも、どっぷり浸かるってことはない。お互いが、そうなんだよ。多分、女子も俺みたいなモンと一緒になる気なんか、ないんだろうさ」

「どうして? 同じ商人仲間なら、同じような生活でしょ?」

ナスル姫のように、生活ががらっと変わるわけではない。
今まで通りの生活に、家族が増えるだけではないのか。

「商人の女子はさ、大抵が、結婚したらどっかに落ち着きたいんだよ。皆が皆、そうじゃないがね。それに俺は特にさ、一所(ひとところ)に留まる期間が短いし。いろんなところに行きたい性なんでね」

「楽しそうね」

「そう言ってくれると、有り難いんだがね」

にこにこと笑うナスル姫に、強く惹きつけられながら、憂杏は心の中で、いかんいかんとブレーキを踏む。
意識しないと簡単に壊れそうなブレーキというのも初めてだが、これほど強く己を想ってくれる人も初めてだ。

「お姫さんは、おかしな趣味だよな」

改めて思うと、腕の中の小さな姫が、宝のように思えてくる。
何となく、こそばゆい気持ちで、憂杏は茶化すように言った。