楽園の炎

泣き出しそうな桂枝に、ナスル姫は慌ててフォローを入れる。
だが最後の言葉に、桂枝はいたく心を打たれたらしい。

「まぁっいじらしい。思えば朱夏様も、似たようなご境遇。お任せください、この桂枝が、生涯お仕え致します」

がばっと頭を下げて、忠誠を誓う。

「・・・・・・母上。何を聞いているのです。ナスル姫は、母上の娘になるのですよ。朱夏とは違い、母上が上に立って姫を指導するのですからね」

横から憂杏が口を挟んだ。
その言葉を受けて、ナスル姫がぺこりと頭を下げる。

「至らないところも多々ありましょうが、よろしくご指導くださいませ、義母(はは)上」

ナスル姫に謙(へりくだ)った挨拶をされても、どうしても姫を、単なる息子の婚約者と見られない桂枝は、困惑した表情で炎駒を見た。
炎駒も少し、苦笑いを浮かべる。

「まぁ・・・・・・頑張ることだな。私も夕星殿を、息子としては扱えぬ。いや、彼なら案外、簡単に馴染みそうな気もするが。お前は特に、身分の開きが大きいからな。それでもいいと、仰ってくださっているのだ」

「炎駒様。炎駒様も、わたくしにそんなかしこまった態度を取らなくても、よろしくってよ。あ、朱夏がお兄様とご結婚となれば、炎駒様とわたくしも、繋がりができますわね」

嬉しそうに、ナスル姫がにこりと笑う。

「そういえば、そうなりますな。では姫君、憂杏と喧嘩をしたら、ここに来られるといい」

珍しく軽口を叩く炎駒に、ナスル姫が声を上げて笑った。
桂枝は、ただ茫然と、そんな二人を眺めていた。